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第7話 死者からのメール

last update 公開日: 2026-10-10 09:00:41

お別れ会の翌朝。

拓真は一睡もできなかった。

玲花からのメール。

何度見ても消えない。

《私を殺した夜のこと、ちゃんと覚えてる?》

悪戯だ。

誰かの悪戯に決まっている。

そう思おうとした。

だが、送信者名は水城玲花。

そして、「殺した夜」。

普通の悪戯なら、そんな言葉は選ばない。

拓真はスマートフォンを握ったまま立ち上がり、カーテンを開けた。

いつも通りの朝の街。

なのに、すべてが違って見える。

着信。

白石美月。

一瞬迷ってから出る。

「もしもし」

『昨日の会、お疲れさまでした』

「美月」

『どうしたの?』

「玲花からメールが来た」

沈黙。

『……は?』

「玲花からだ」

『何言ってるの』

「メールが来たんだよ」

『そんなわけないでしょ』

「俺だってそう思ってる!」

声が大きくなる。

拓真は息を整えた。

「でも来た」

『内容は?』

拓真は一瞬迷った。

「殺した夜を覚えてるかって」

電話の向こうが静かになった。

そして、美月が言った。

『誰かが知ってるんじゃない?』

「誰が?」

『分からない』

「君じゃないよな」

『は?』

「このことを知ってるのは、何人いる?」

『何言ってるのよ』

美月の声が震える。

『私は何もしてない』

「でも君は――」

『私、あなたが玲花さんを殺すなんて知らなかった!』

拓真は黙った。

美月も黙った。

数秒。

電話越しに、互いの呼吸だけが聞こえる。

「言い方に気をつけろ」

拓真が低い声で言った。

『だって』

「事故だ」

『でもブレーキは』

「美月」

声を強くする。

「二度とその話を電話でするな」

電話を切る。

拓真は額を押さえた。

まずい。

誰かが、何かを知っている。

玲花本人か?

ありえない。

海へ落ちた。車は沈んだ。

あの状況で助かるはずがない。

だが、遺体は出ていない。

その事実が、今になって恐ろしく感じる。

スマートフォンが震えた。

拓真は飛び上がるように画面を見る。

ニュースアプリの通知だった。

《MIZUKI DESIGN取締役の行方不明から三週間 捜索続く》

「くそ……」

拓真はスマートフォンをソファへ投げつけた。

◇

その頃。

数十キロ離れた部屋で、私はノートパソコンの画面を見ていた。

「開封確認か」

輝が画面をのぞき込む。

メールに仕込んだ開封通知が、拓真が何度メールを開いたかを教えてくれる。

「何回見てる?」

「七回」

私は笑った。

「効いてる」

「趣味が悪いな」

「褒め言葉として受け取る」

「褒めてない」

私は椅子にもたれた。

「次はまだ送らない」

「どうして?」

「怖がらせるなら、間を置いた方がいい」

輝が呆れた顔をする。

「どこでそんな技術を覚えた」

「結婚生活」

「怖いな」

私は笑った。

でも、画面の向こうの拓真を想像すると、笑いだけでは済まなかった。

あなたは今、眠れない?

怖い?

誰かに見られている気がする?

私は海の中で、もっと怖かった。

息ができなくて、死ぬと思った。

だから、少しくらい味わえばいい。

夫婦でしょう?

痛みも、分け合わないと。

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